リーダー・マネージメント層向けのコーチング事例 ~テーマ:リーダーシップスタイルの悩み~

 

me:Riseキャリアコーチ

中田 真理子

目次

1. リーダー・マネジメント層へのコーチングの特徴

2. 法人向けコーチングと個人向けコーチングの違い

3. リーダーシップスタイルの課題に対するコーチング事例

4. リーダー・マネジメント層の方が外部のコーチを利用するメリット

 

 

1. リーダー・マネジメント層へのコーチングの特徴

 

◆法人コーチングの利用開始時は、コーチングに対して懐疑的な見方をされていることは少なくない

 

法人コーチングではリーダー・マネジメント層の方に対してコーチングをさせていただくことが多くあります。リーダーあるいはマネジメント側にいる方に対してコーチングをする際、始めはコーチングに対して懐疑的な見方をされていることも少なくありません。

 

組織の上に立つ方なので、ご自身で課題を乗り越えてきた経験があり、他人の(まして場合によっては年下の)サポートを必要とするのか、あるいはコーチングという質問を主とした関わり方でどのような効果があるのか疑問にもたれることが多いからです。これは、ごく自然な反応と感じます。

 

 

 

2. 法人向けコーチングと個人向けコーチングの違い

 

 

◆法人コーチングの利用者(当事者)は、コーチングを受ける動機の強さとコーチとの関係構築(本音を話す)の早さが個人の利用者と比較して低い傾向にある

 

企業から依頼を受けて行う法人コーチングの場合、依頼者は人事部や人材開発に関わる組織であるため、実際にコーチングを受ける本人と違う方になります。

 

me:Riseの個人に対するキャリアコーチングのように、コーチングを受ける本人がコーチングをお申し込みいただくときとの大きな違いは、コーチングを受ける動機の強さとコーチとの関係構築(本音を話す)の早さです。法人コーチングの場合、ご本人自身は現在さほど悩みを持っていないと思われている方も多くいらっしゃいます。

 

コーチ側としては、このような点に配慮しながら特に初めは丁寧に進めていくことを心がけています。一度コーチングに対する効果を感じ、コーチとの良好な関係性を築くことができると、自然と色々なことを話してくださるようになります。そして、リーダー層やマネジメントの方の悩みが解消されたり、ご自身の変化を感じられると、組織のメンバーへの関わり方や仕事の進め方にも変化があるため、組織の活性化やパフォーマンス向上等、組織に対しても様々なメリットがあります。

 

 

 

3. リーダーシップスタイルの課題に対するコーチング事例

 

 

特に私自身が今までコーチングをさせていただいた方では、ご自身のリーダーシップスタイル(≒部下への関わり方)を見直し、前に進まれていく方が多いと感じ、今回はこの事例についてご紹介します。(※守秘義務の観点から、お名前や内容は変更している部分があります。)

 

佐藤さん(仮称)は通信機器を扱う会社で支店を任されている50歳前後の方で、入社以来同社で働き支店長になられました。

 

初回のセッションでは、お互いに自己紹介をした後、佐藤さんにコーチングのテーマについて伺ったところ、何を話そうか迷われている感じでした(法人コーチングでは事前に研修等で課題を明確にしていない場合、テーマが決まっていない場合が多いです)。

 

何を話そうか少し戸惑っているご様子だったので、まずは今の組織について色々とお話をいただくことにしました。

 

今の組織の良いところや課題に思う点、ご自身の日々思うことなど話す中で、世代の離れた部下との関わりについて悩んでいることが出てきました。また更にお話しいただくうちに、その部下に限らず、周りの人が実際自分のことをどう思っているのか分からないということもおっしゃいました。

 

テーマとして、年の離れた部下との関わり方を扱いましたが、「そうはいってもリーダーとして厳しさは必要だし、部下が間違ったことを言ったら論理的に諭したり分らせることは大事だと思っています」と話されました。

 

部下との関わりに対して少しモヤモヤとするところを感じながらも、ご自分のやり方が適切だと思おうとしている印象を受けました。

 

 

2回目のセッションで、その後の部下の関わり方を伺ってみました。

 

佐藤さん:「このままでいいのかは少し迷うね」

中田コーチ:「佐藤さん、佐藤さんは今の職場でどのようなリーダーになりたいですか?」

佐藤さん:「部下からどんどんと意見が出てくるような職場です。」

中田コーチ:「今の佐藤さんの関わり方で、そのリーダー像は達成できそうですか?」

 

~しばらく沈黙~

 

佐藤さん:「難しそうですね、、矛盾していますよね…」

 

 

ご自分のありたいリーダー像と自分が実際に部下に対して行っている関わり方にギャップがあることを認識された瞬間でした。

その後、佐藤さんは、「実は、部下への関わり方に対してこのままで良いのか長い間迷いを持っていました」と心の内を話してくださいました。

 

ここからは、どのように関わり方を変えていきたいのか、どのような行動からできそうかをテーマにセッションを継続していきました。

 

数回のセッションを通して、佐藤さんは自分のリーダーシップを見直し、自分のなりたいリーダー像に近づくために、いままで自分の考えを正として相手を動かしたり、トップダウンの厳しい関りだったのを部下に対して褒めるようにしたり、1on1ではまず部下の話を聞いて受け止めるなど、少しずつご自身の部下との関わり方を変えていきました。

 

始めのうちは「褒めるのをやってみます」と言いながらも、「褒めるなんて効果があるのだろうかね。自分は褒められると逆に疑ってしまうな」と疑心暗鬼の部分もありました。セッションを重ねていくことで、自分が部下への接し方や関わり方を変えていくと、徐々に部下が佐藤さんに今まで以上に話しかけてきたり、今まで言わなかったような提案をしてくれるようになったそうです。

 

手応えを感じるにつれてご自分から積極的に話しかけたり、承認をしたり、部下の話をしっかり聴くことを進んで実践されるようになり、セッションが進むにつれて、佐藤さんが実現したいリーダー像、チームに近づいていると強く感じました。

 

 

4. リーダー・マネジメント層の方が外部のコーチを利用するメリット

 

リーダーやマネジメント層の方は、業務が多忙かつ同じ立場の方が少なく、立ち止まってご自身のモヤモヤを相談する相手はなかなかいないのではと思います。

 

また、これまで成功してきた自分の仕事の進め方やリーダーシップスタイルを変えるのは勇気が要ります。

 

コーチと一緒にご自分の考えに向き合うことで、ご自身を見つめなおし、より自分の実現したいリーダーになるきっかけを掴むことができ、結果として組織にも良い影響があると感じます。


【本記事の執筆者】

 

中田 真理子 (紹介インタビュー≫

 

大学では心理学を学び、三井物産(株)に13年間勤務。国内外の財務業務や石油・ガスのエネルギービジネスを経験。ロシア、イギリスでは多様な国籍・価値観のメンバーと共に働く。 

 

多様化する環境の中で、働く人が自分らしく輝いて仕事をする、人生を送ることによりダイレクトに深く関わりたいと思い、独立。現在は20代の若手から管理職を対象とした研修講師、コーチとして活動中。 

 

自身の経験や心理学のバックグランドを踏まえ、個々人が自分の内面を客観的に振り返り、自分の軸やビジョンを引き出すコーチングに定評がある。 

 

CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ (CPCC) 、全米NLP協会プラクティショナー