コーチ紹介インタビュー
ドイツ、日本、ロンドン、その時々の環境変化や友達、先生との出会いが自分を変えた子供時代
―― まずはコーチになるまでのことをお伺いしていきたいのですが、子供の頃はどんなお子さんだったのですか ?将来どんなものになりたかったなど教えていただけますか?
ドイツで生まれて5歳になる頃に日本に来たのですが、初めての習い事が習字で、とても楽しかったので当時は単純に「習字の先生になりたい」と思っていました。
子供の頃は、結構ぼーっとしているような子でした。また、割とひょうきんというか 、おちゃらけることが好きだったので、皆さんが抱く今の私のイメージとは大分違うのではないでしょうか(笑)。親戚にもよく「本当にあなたって“けったい”な子ね」と言われていたんです。『けったい』って大阪の方言で「変わった」っていう意味みたいですね。
小学校半ばくらいまではのんびりとしておちゃらけることが好きなタイプでしたが、小学校6年生の頃から勉強などを頑張りだして変わっていった部分があります。
というのも、10歳の頃、親の仕事で今度はロンドンに引っ越しました。日本人学校に通い、今でもつきあいがあるような友達にも恵まれ、毎日が本当に楽しく充実していました。それまでは全く勉強をしなかったのですが、仲の良い友達が塾に通ったり一生懸命勉強している姿を見て、自然な流れで私も勉強するようになり、そこからだんだんと「なんでも頑張る子」に変わっていきましたね。頑張ると結果がでるのも楽しかったんです。
また、ピアノも日本で習っているときはテクニックに重点を置く厳しい先生だったので練習が大嫌いでしたが、イギリスではテクニックよりも「あなたの感情をもっと出しなさい」というように表現力を重視する指導だったので、そこで初めてピアノの楽しさを知りました。そのおかげで、小さなコンクールですが賞もいただく程に上達できました。ロンドンでの生活は友達や先生、環境などいろんなものが変わり、自分の感性や性格にとても影響を受けた時代でした。
―― ロンドンでの生活が「なんでも頑張る子」に中田さんを変えたんですね?
そうですね。ロンドンにいたときは、楽しみながら勉強やピアノなどいろいろなことに頑張れたのですが、日本に帰国した後は、がんばることがすごく窮屈な自分をつくってしまった部分もあると思います。高校生になった頃に、学校の中では割と成績は良かったので、「なんでもできる中田さん」というイメージがついてしまい、それを自分も維持しなければならないと思う様になってしまいました。誰かに言われたわけでもないし、親から勉強しろとも言われたこともないのに、勝手に「頑張らなければいけない」と自分で思い込んでしまったんです。そこからすごく辛くなってしまい、いつも「人から期待されているイメージ」を自分も大事だと思うようになってしまったんです。
「中田さんって責任感あるよね!」と言われると、責任感のある人でいようとか、だんだん自分の軸ではなく、他人が良しとする自分のイメージに沿って生きている部分が多くなってしまったと思います。
その後、大学生の時に1年間イギリスへ交換留学に行くことになりました。その時はあらゆる真反対なことをしましたね。ここでは言いにくいことも多々あるのですが(笑)、日本での自分のイメージなど気にせずにやりたいことは何でも試して、いろいろな場所にも旅をして、素敵な人たちに出会い、振り子を真逆に振ったことでようやく本来の自分に戻った感じで、ほどほどバランスのいい状態になって日本に帰ってきました。
自分が無意識のうちに我慢していた部分が解放されたのだと思います。イギリス留学中は本当に自由に過ごしていました。改めて社会人になるまでを振り返ると、自分で環境を変えたというよりは強制的に環境が何回か変わったことで自分を変えられた要素が強いと感じています。
イギリスで受けたコーチングとセラピーで「〇〇すべきだ」が取れた
―― 働きだしてから、コーチになるまでの経緯を教えていただけますか?
大学では心理学を勉強していました。その後、海外で働きたいと思っていたこと、祖父が商売をやっており経営にも興味があったことから、両方ができる会社で働きたいと思うようになり商社を希望しました。入社後は素晴らしい上司や先輩にも恵まれ、仕事のやりがいもありましたが、どこかモヤモヤとした感覚もありました。でも、自分でもそれが何なのかよくわかりませんでした。また、20代のころは唯一の正解をずっと探していたように感じます。例えばこのまま今の仕事を続けていくのがよいのかな、とモヤモヤしているときに、これが正解と思える仕事が見つかったら辞めようとか。また、この転職だったら他の人に「いいね」と認められるかなとか、周りの目をすごく気にしていた自分がいました。今思えば、「自分は何がやりたいのか」「自分が大事にしている価値観は何か」という自分の内側を見ること、自己認識を深めることをあまりせずに、外側を見てこれがいいのかな、あれがあっているのかなと考えることが多く、結局答えが見つからなかったのだと思います。30代に入って仕事もますます充実してきましたが、同時に、「このままでいいのかな」という感覚もだんだんと積み重なってきました。
ちょうどその頃、イギリスに転勤し時間ができました。日本では残業が多く自分のことを考える時間がなかったのですが、少し時間に余裕ができたこともあり、真剣に今後どうしていきたいのか考えるようになり、セラピーとコーチングの両方を受けました。何回か受ける中で、「本当は自分は何がしたいのか」「自分は人生で何を大事にしたいのか」とか、周りからの期待や世間のこうあるべき、という常識を外した時に、自分の内側から来るものは何か、をじっくりと見ることができました。「こうじゃなきゃいけない」「ああしなきゃいけない」「私はこうするべきだ」という自分が勝手に作っていた『○○すべきだ』というものが取れた感じでした。
1年半くらい悩んでいましたが、ある時、ふとした瞬間に、今が会社を辞めるタイミングなんだ、となぜか腑に落ちた瞬間があり、そのときに退職を決めました。
それでは今後何をしていきたいかと考えると、一人一人の人がより自分らしく生きること、生き生きと働いていくことを支援していくことでした。
そう感じた1つは、自分の経験からなのですが、思い悩んでなかなか前に進めない時、ちょっとした後押しや、誰かが応援してくれることで行動できることがたくさんあると実感したからです。ですので、そういうことを自分もしていきたいと思いました。また、経営や組織というものにとても興味があったので、人財の育成を通して組織を強くしていくことにも関わっていきたいと思いました。
もう1つは、チームメンバーとの関わりの中で、優秀な人や、すばらしい人柄や素質があるのに自分に自信がなかったり自分の良さに気づかず、「私には無理です」とか「それは難しいと思う」とためらっている人をみて本当にもったいない!と何度も思った経験があるからです。こんなに素晴らしい人達なのにどうして踏み出さないんだろうと思っていました。でも、もし誰かが傍で応援してくれたり、結果が失敗でも成功であってもいつもこの人なら必ず無条件に自分を応援してくれる、という人がいてくれたら、安心して勇気がでたり、自信をもってのびのびと頑張れるのではないかと思いました。このような経験から、退職後はコーチングの勉強をしてみようと思いました。
―― セラピーやコーチングはどのくらいの期間受けていたんですか?
コーチングは2~3週間に1回くらいの頻度で3か月間、セラピーとコーチングを合わせたセッションは、1年間に7回程度受けました。
―― そこでのセラピーとコーチングの経験が大きかったんですね?
そうですね、とても大きかったと思います。退職後、私はコーチングとともに心理療法やセラピーも勉強しました。その中で、自分が今後軸足をおいて取り組みたいのはどちらかなと思ったときに、よりコーチングの方に関わりたいと思うようになりました。
―― 中田さんの中でセラピーとコーチングの違いはどんなところにあるんですか?
私の理解ですが、セラピーはマイナスの状態をゼロに戻すこと。バランスが取れていない状態を整える感じでしょうか。ゼロの状態から本人が思う、より良い方向やゴールに向かって進むのがコーチングと思っています。ただ、セラピーでもこのような考え方をするものもあるので、線引きは正直難しい部分はあるかもしれません。
私はより前向きな方向に進むことをサポートしていきたいと思いました。
―― コーチングスクールに通い始めてからコーチになるまでの流れを教えていただけますか?
私はCTIというコーチングスクールに約1年通い、コーチの国際資格を取りました。資格を取得するまで有料で100時間セッションをする必要があり、その延長でクライアントさんがいたり、他には紹介など個別に依頼を受けながらコーチングを続けていました。
当時は企業研修が忙しく、コーチングの人数はそんなに増やさず、細々と続けていましたが、研修をする中で、1対多数であっても結局、一人ひとりの方ときちんと向かい合わなければ良い研修はできないということを痛感し、改めてコーチングの大切さに気づきました。
研修の仕事が落ち着いてきて、コーチングの仕事を増やしていきたいと思っていた時に、知り合いの方に相談したところ、me:Rise(ミライズ)を紹介していただきました。今は友人や知り合いからもコーチングの依頼を受けることもありますが、基本的にはme:Riseと、コーチングも提供している研修会社から依頼されることが多いです。
―― どんな方をサポートすることが多いですか?
特にこういう方というのはありませんが、最近me:Riseさんで多いのは30代前半の男性の方です。個人でもコーチングを受けようと思われる方が多い年代なのかもしれませんが、それまでは20代〜40代の女性が多かったです。企業から依頼される場合はばらばらですね。管理職の方もいらっしゃいますし、先日依頼された案件は20代の若手の方が中心でした。
―― それぞれ取り扱うテーマや悩みも違いますか?
お一人お一人違いますが、お勤めの方は、今後のキャリアをどうしていきたいか、今の職場でどう自分の力を発揮していくか、チームをいかに強くしていくか、というテーマが多いです。一度立ち止まって自分の人生を見直したい、自分のキャリアを考え直したいと思っている方は多いと思います。また、管理職になって改めて自分はどういうリーダーになりたいのかを考えたいという方も多いですね。中には毎回テーマを変える方や、もっとプライベートの悩みをテーマにする方もいらっしゃいます。
―― いまはコーチングと研修のお仕事が中心ですか?
そうですね、コーチングと企業研修が中心です。時々、通訳をしています。言えるほどではないので、通訳をしていることはあまり人には言わないんですけどね(笑)。
実は、来週初めて英語でコーチングをすることになりました。どんなセッションになるのかドキドキ半分、ワクワク半分という感じです。外国の方向けに研修をしたことはありますが、コーチングは初めてなんです。これまで、外国の方へのコーチングはできるかと何度か聞かれていたのですが、その度にお断りしていたので、今回は自分にとってチャレンジかなと思っています。
―― 海外での経験もコーチングの際に役立っていますか?
役立っていると思います。もちろん海外経験がなくても、もともと持っている方もいらっしゃると思いますが、私は海外経験により視点が増え、色々なことに対する許容度が広くなったと感じています。文化も違えば同じ言動でも意味が違うこともありますよね。海外では日本とは異なる文化があり、日本が良しとしている風習や考え方が必ずしも海外で受け入れられているとは限りません。そういう意味では、あまり良し悪しを判断しないのかもしれません。「そうなんだな」「そういう考え方もあるんだな」と、受け止められるのでそれがセッションでも話しやすさを出しているかもしれないですね。
人の変わるタイミングは予想がつかない。そして『変わりたい』『この状況をどうにかしたい』という気持ちが強ければ強いほど、変化も大きい
―― 印象に残っているコーチングセッションやコーチを受けた方の変化について話せる範囲で教えいただけますか?
毎回印象に残ることがありますが、二人の方についてお話しますね。
一人目の方は役職が上がったばかりの40代女性の方です。ご本人が希望して上がったわけではないので、会社を辞めたいと思われていました。「周りの人は冷たいし、仕事のレベルもあがるので自分ができるとは思えない。辞めたい。」と最初のセッションの6、7割はこのような感じでした(笑)。「では、今の状況で、どんな小さなことでも何かするとしたら、何ができそうですか?」「◯◯さんは、何がしたいですか?」と話していった結果、次回までに、自分から周りの人に話しかけることはできそうということで、これをアクションプランにしました。正直2回目のセッションはどうなるかなと心配していましたが、セッションが始まった途端に、「今、会社がすごく楽しいんです!」とおっしゃって、びっくりするほどご本人の仕事に対する意識やモチベーションが変わっていました。勇気をだして自分から上司や同僚に毎日話しかけるようにしたら、実は皆さんとても親切で、わからないことも丁寧に教えてもらえたそうです。話しかける前は、自分が作ったイメージによって不安になっていたのが、行動することでイメージが壊れ不安が減り、周囲と関係が築けて前向きに向き合うことができたのだと思います。もちろんその方の行動力がすばらしいのですが、一つの行動がきっかけで私たちは大きく変わることができるんだなと思った経験です。
もう一人の方は、30代女性の方で、セッション当日は仕事のことでとても悩まれていました。何事にも一生懸命でまじめな方で、「この数ヶ月間、お客様と案件を成立させるために頑張ってきたのに、うまくいく気がしない。」と涙ながらにお話し下さったんです。でも、セッションが終わるころには「もう大丈夫です。やることが明確になりました。スッキリしました!」と言われました。
1時間の間に何をしたかというと、視点が変わっただけなんです。それがコーチングで行なっていることなのですが、私も含めて、私たちは悩みがあるとそれが虫メガネで見るように大きく強調されて見えてしまい、逆に周りが見えなくなってしまいます。その虫メガネを外すことで別の選択肢を思いついたり、自分の良さや既にできていることに改めて気づいたり、こうありたいというイメージも明確になっていくのだと思います。視点が変われば感情や考え方が変わり、行動も変わりますよね。
セッションをする度に、人の変わるタイミングは予想がつかないなと感じます。ただ、表面的には変化に気づかないレベルでも、内面では徐々に変化が起きていることもありますし、変化の現れ方は人それぞれだと思います。そして、『変わりたい』『この状況をどうにかしたい』という気持ちが強ければ強いほど、真摯に自分に向き合っているほど、変化も大きいなと感じます。
―― コーチングでいつも心がけていることはありますか?
2つあります。1つ目はコーチングスクールで教わったことになりますが、【目の前にいるクライアントさんは欠けているものが一切ない存在である】ということです。目の前にいる方は治す対象ではなく『既にその人の中には力もあるし、才知もあるし、あらゆるリソースも揃っている。だけど、今はそれがうまく出せていないだけ。』そのように心から信じることで、目の前にいるクライアントさんはできる、自分がなりたいようにこの人は実現できると思うようになります。この自分の気持ちや在り方がセッションの場づくりにも非常に影響するので、とても大切にしています。
2つ目は、自己管理です。時々自分が持っている悩み、あるいは過去悩んだことと似たテーマを扱う場合があります。そのときに、自分の感情や気持ちがアドバイスのように出てしまわないように、きちんと自己管理をして場を作ろうと心がけています。
どういう人と一緒に働くか、つながりがあるかはとても大事。
―― なぜme:Riseでキャリアコーチをされようと思ったのですか?
私は人とのつながりを大事にしていますが、今回も信頼している講師の方からme:Riseを紹介していただいたということが大きいですね。会社を辞めてからいただいている仕事は殆どが紹介や、声をかけていただいて広がったものなんです。コーチングは自分から学び始めましたが、企業研修はもともと自分が人前で話すことを想像できなかったので考えていませんでしたが、コーチ仲間で研修講師もしている方が多く、そこからチャンスをいただき広がっていきました。通訳も同じですね。どういう人と一緒にいるか、どういう人と一緒に働くか、どういう人とつながりがあるか、ということがとても大事なんだなと、特に会社を辞めた後に強く感じています。これからも人とのご縁を大切にしていきたいと思います。そういった中で、今後コーチングの仕事を増やしたいと信頼している方に相談したところme:Riseをご紹介いただいたんです。
実際me:Riseのオフィスにお話を伺いに行ったとき、皆さんとても優しい雰囲気で迎え入れてくださり、初対面でしたがとてもリラックスしてお話ができました。事業への考え方も、コーチングという事業を通して人に寄り添ってサポートしていきたいという想いを強く感じました。とても素晴らしい方々と出会えて嬉しかったです。
me:Riseで働き始めて半年弱経ちますが、とても仕事がしやすいです。新しいことも積極的に取り入れられているので、ドキドキしながら(笑)新しいチャレンジも同時にさせていただいています。me:Riseのクライアントさんは個人の方が直接申し込まれるので、「変わりたい」とか「より自分らしく生きたい」というパッションの強い方が多く私も毎回刺激をいただいています。me:Riseで私はとても成長させてもらっていると感じています。
―― キャリアコーチの中田さんから見たme:Riseの良さとは何ですか?
コーチングを受けたことのない方にとってコーチングがどういうものか、とてもわかりにくいと思うんですね。それをホームページやnoteでわかりやすく伝えられていると感じました。他にもサポーター制度やその方が成長するために必要なプログラム、材料が整っていると思います。コーチングを受ける方にはとても良い環境が準備されていると感じます。
【Profile】
中田 真理子
大学では心理学を学び、三井物産(株)に13年間勤務。国内外の財務業務や石油・ガスのエネルギービジネスを経験。ロシア、イギリスでは多様な国籍・価値観のメンバーと共に働く。
多様化する環境の中で、働く人が自分らしく輝いて仕事をする、人生を送ることによりダイレクトに深く関わりたいと思い、独立。現在は20代の若手から管理職を対象とした研修講師、コーチとして活動中。
自身の経験や心理学のバックグランドを踏まえ、個々人が自分の内面を客観的に振り返り、自分の軸やビジョンを引き出すコーチングに定評がある。
CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ (CPCC) 、全米NLP協会プラクティショナー