メガバンクでの法人営業から学習支援のNPO、戦略系コンサルティングファームを経てフリーランスへ。

 

フリーランス(人事コンサルタント、キャリアカウンセラー)

伊藤優さん

 

メガバンクから学習支援のNPO、戦略系コンサルティングファームを経てフリーランスへ。アフリカでのインターン経験がきっかけで「心の健康」を自分のテーマに。

 

――これまでのご経歴と現在のお仕事について教えていただけますか?

 

今はフリーランスとして、設立1年目から6年目くらいまでのベンチャー企業の人事関連、例えば採用や社内制度策定に伴走、支援する仕事をしています。また、並行して個人の方を対象としたキャリアカウンセリングも行っています。

 

フリーランスになる前は、業界も仕事内容もバラバラなのですが、3つの会社に勤務していました。

 

まず、新卒で入社したのは株式会社三菱東京UFJ銀行(現株式会社三菱UFJ銀行)です。法人営業を2年半弱経験しました。学生の頃から心の健康、メンタルヘルスに関心があったため、メンタル不調に悩む若い方、例えば不登校や引きこもりで悩んでいる方向けに学習支援をするNPO法人キズキ(現株式会社キズキ)に転職しました。そこでは、管理部門の立ち上げとマネジメント、具体的には、採用や人事制度策定、労務管理、経理財務などに3年半ほど携わりました。人事の仕事にはやりがい、面白さを感じていましたが、「経営目線」を持ち、よりインパクトの出せる人になりたいと、ボストンコンサルティンググループという外資系戦略コンサルティング会社に転職しました。そこでは、官公庁や企業の新規事業立案をご支援するプロジェクトの中で調査・分析などの業務を担っていました。

 

 

――もともと心の健康に興味があり、今もそのお仕事をされているということなのですね。何か興味を持つきっかけなどがあったのですか?

 

大きく2つのきっかけがありました。

 

ひとつ目ですが、もともと学生時代は国際協力を仕事としたいと思っていたんですね。例えば国連のような組織に勤め、“1日1ドル以下の生活”をしている人を支援するようなところで働きたいという想いがあり、大学生の時にアフリカのトーゴという小さな国にインターンシップをしました。現地の方が運営しているNGOでのインターンで、現地の方のお宅にホームステイをさせていただいていました。物価が安いこともあり、確かに“1日1ドル以下の生活”であったのですが日本にいたときの自分よりも遥かに幸せそうに見えたのですよね。なぜかというと、あくまで外から見たら、ということになりますが、そこにいる人々は人生で大事にしているもの、例えば家族だったり、宗教だったり、自分が大切だと思っているものを大事にしながら、とても心豊かに生きていらっしゃったからです。翻ると日本にいたときの自分や自分の周囲は確かに経済的には恵まれていて、1日1ドルで生活するような生活ではないけれど、自己否定していたり、勉強や仕事をすごく強迫観念に駆られてやっていたりしていて。それは本当にあるべき姿なのだろうか?と考えるようになりました。心を健康に過ごす、暮らす、生きるということに関心が向いたきっかけはそこにあったように思います。

 

もうひとつは、これは自分が社会人になってからのことですが、自分自身がメンタル不調を経験したことも大きいです。コンサルティング会社では組織や仕事になかなか適応できず、自分自身がメンタル不調と休職を経験したのですが、その時に当事者として「人の人生において、心の健康ってやっぱりすごく大切なんじゃないかな」と改めて感じました。私自身は周囲の支えを得て運よく回復できたものの、同じようにメンタル不調に悩む人が多数存在するにも関わらず、安心して回復を目指せる場が非常に少ないこと、そもそも不調に陥らないための「予防」の取り組みが社会に不足していることを痛感しました。この2つが心の健康に興味を持ったきっかけとしては大きいと思います。

 

今は、「人々が心の健康を保ち、自身の人生を“けっこういいじゃない”と肯定して生きられる時間を増やしたい」というテーマのもと、お仕事をさせていただいています。人の心の健康は本当に様々な要素から成り立っていると思うのですが、そのうちの1つに「幸せに働けること」があるのではないか、という仮説を持っています。たとえば、ミスマッチが起こりにくい個人も組織も両方幸せになれるような採用を実現するためのお手伝いをすること、個人の方の働く上での価値観の言語化と、それに合ったお仕事を探すプロセスに伴走することなどを通じて、1人でも多くの方が「幸せに働けること」に貢献していけたら、それこそ自分自身の幸せだな、と思っています。

自分の問題意識や仮説を検証するためにさまざまな業界、職種を経験にチャレンジ。大きく何かを変えるときには、敢えて自分と接点のない第三者の力を借りて相談してきた。

 

――さまざまな業界、職種をご経験されていますが、その時々でどんな想いがあって選択されたのでしょうか?

 

一見バラバラのようですが、その時々に自分としての問題意識や仮説があって、それを検証するためにいろいろな業界や職種に身を置いてきた、という感覚があります。 自分の納得感を求めてきたという意味で、自分の中ではつながりがあるのかな、と思っています。 その時々で、自分なりに悩んでいましたが、「新しいところへ行って、うまくいかなかったら?」という怖さと「自分の問題意識などを確かめたい、チャレンジしたい」という気持ちを天秤にかけて、後者が重くなった時に行動に移すという感じだったと思います。その都度、すごく迷いましたね。そして、今思えばどの局面でも大きく何か変えるときは、いろいろな人に相談しているような気がしますね。

 

――どんな人に相談するのですか?

 

身近な人に相談することもありましたが、第三者の方に話を聞いてもらうことも多かったですね。 迷っていること、相談したいことが見えてきたら、周囲に「こういう方を知りませんか?」と聞き、初対面の方に話を聞かせてもらったりとか、コーチングを受けたりとか。そういう形でやはり第三者の方、敢えて自分と普段それほど接点のない方の力を借りることが多くあったように思います。

 

身近な方だと、「この人だとこういうことを言ってくれるだろうな」と想像してしまうところがあります。もちろん、例えば精神的に辛く、とにかく優しく聞いてくれそうな人に話したいときには、身近な方のほうがよい場合もあると思います。一方で、もう少しフラットに、それこそ物事を天秤にかけて考えたいときなどは、敢えて自分を知らない人のほうが客観的な話ができるかなという期待がある気がします。

 

 

 

その時々の自分に対してなるべく正直に、納得感がある状態にすることは自分にとって大事なこと

 

 

――お仕事やキャリアで心がけてこられたことは何でしょうか?

 

その時々で自分の気持ちに正直に向き合い、納得感があるようにすることは心がけてきたことでした。その時々の問題意識であったり、何かを経験して新しく芽生えた疑問や関心などに対してなるべく正直でいて、納得感を得られるように行動することは自分にとって大事だと考えています。 ライフステージなど、いろいろ変化する中で自分の中身は変化してきたと思っていますし、これからもきっとそうだと思うのですけれど。

 

その時々の「こうありたい」という自分像や、自分の素直な問題意識と行動や環境が一致していないときは苦しいと感じてしまうことが多かったと感じています。自分の想いと実際にやっていることはなるべく一致させておきたいと思っていますし、そのためにも自己理解は大事だと思っています。 自分自身の内面を100%言語化、整理することは今も難しいと感じていますが、定期的に誰かと話したり、日記を書いたりすることで、自分自身の想いや、やりたいことを整理するように努めています。

 


 

サポーターとして、自分の経験を話して誰かの役に立つことが喜びに。同時に自分自身も普段出会えない人と出会え、考え方の幅が拡がる経験ができることが有難い。

 

――サポーターセッションではどんなお話をされましたか?

 

営業職に興味がある方の時には、自分が過去に営業職で経験したことや感じたことを率直にお話しさせていただきました。別の方の時は、その方の取り組まれていることに対して意見を求めていただいたので、それに対して自分なりに思ったことを率直にお話しました。

 

――やってみてどうでしたか?

 

ひと言でいうと、すごく楽しかったです。 サポーターセッションは、これまで体験したことのなかったような人との対話のあり方だと感じました。何かアドバイスをしたり、コーチング的な関わったりするのではなく、あくまで相手の方がより考えの幅を拡げる為の材料を提供しているみたいなものだと理解をしているのですが、そういう形での話の仕方は新鮮でした。それが何か相手の方の選択肢や考えの幅を拡げるきっかけに多少なりともなっていたら楽しいし、嬉しいことだと思っています。

 

――サポーターでいることはあなたにとってどんな意味や価値がありますか?

 

大きく分けると2つあると思っています。一つ目は純粋に自分の経験を話すことで、その方が求めているものを少しでも提供できるということは嬉しく思います。 もう一つは、普段の生活で出会えないような方と出会って、その方がどんなことを考えていてどんな悩みを持っているのかお話を聞けること。それ自体が楽しくて、自分自身もサポーターをやりながら「そういう考え方もあるのだ」と考えの幅を拡げられる部分で有難いと思っています。

 

 

自分個人のつながりの中でしかできなかった人との出会いやコミュニケーションを、サービスの中で得られることはすごいこと。

――どんな人に使ってほしいと思いますか?

 

いろいろなユーザーの方に使っていただけるといいな、と思います。 me:Riseのユーザーの方はおそらく内省されたり、何らかの意思決定をされる局面にいらっしゃる方が多いと思うのですが、内省であれ、意思決定であれ、考えの幅を拡げたり、ちょっと違う見方を得てみたりとか、いろいろな意味で意義があると思っています。自分自身が迷ってきた局面で第三者的な人の力を借りてきたという話をしましたが、第三者の体験談を聞くことや、話をしてみることには、身近な人と話すこととはまた違った価値があるのでは、と思っています。 me:Riseのサポーターの仕組みを通じて、これまでなら自分の知り合いの中でしか得られなかったような人とのつながり、コミュニケーションをサービスとして利用できるのはすごいことだと感じました。