コーチ紹介インタビュー
「物ではなく人」人と向き合うことへの思いを抱き続けて
――これまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、就職先に選んだのはレディースアパレルメーカーでした。洋服が好きだったことに加え、販売職なら人と関わりながら仕事ができると思ったからです。また、社会人になるにあたり、人見知りを克服したいという強い気持ちもありました。最初は緊張の連続でしたが、毎日不特定多数のお客様と直接お話しし、その方にぴったりの一着をご提案できた時の達成感が大きく、やがて「人と向き合う面白さ」に気づきました。
今思えば、この時の経験はコーチングの本質に通じるものがあったように思います。単なる販売ではなく「お客様自身がどんな自分でありたいか」という部分に寄り添うことが、当時の私にとって大きなやりがいでした
その後、ステップアップをきっかけにバイヤーへとキャリアチェンジしたことで、仕事の対象が“人”から“物(洋服)”に変わることになりました。商品選定や仕入れの仕事はやりがいもありましたが、人と直接関わる機会が減ってしまったと感じることが増え、「物ではなく、人と直接関わり、その成長を応援する仕事をしたい」と強く思うようになりました。
そして転職先に選んだのが人材ビジネス業界です。営業企画や業務委託案件の立ち上げを指揮するプロジェクトリーダーを経験し仕事も充実していましたが、子供が生まれたことをきっかけに、改めて自分のキャリアについて真剣に考え直すことになります。
――人生の大きな転機が訪れたのですね
そうですね。当時、妻の生まれ育った環境で子育てをしたいという思いがあり、東京から離れたいと思っていました。しかし会社では異動届が受理されなかったので、最終的に退職することにしました。当時は男性の育休制度も一般的でなく、退職という手段しか残されていなかったのもあると思います。でも、「子育てにしっかり向き合おう」という前向きな気持ちが強かったのか不安はあまり感じていなかったですね。夫婦ともに無職で移住し、1年間子育てに専念しました。しかし、このような子育てを通した得難い経験をしたことが、今の私の価値観へと繋がっているように思います。
子育てが落ち着いた後は再び人材ビジネスの会社に就職し、営業企画を担当することになります。「人材営業の現場経験がない自分に、営業部隊を支援する企画ができるのか」という不安もありました。
――そこで営業職に挑戦されたのですね。
はい、これまで就活の際にも避け続けてきた営業職に挑戦することにしたのです。最初は苦手意識が強かったのですが、「コミュニケーションを取ることで、お客様の役に立てる」という視点に立った途端、自然と楽しさを感じるようになり、次第に自信も持てるようになりました。たくさんの方のキャリアを支援するなかで、目の前の人に真摯に向き合うことができれば、成果は自然とついてくる。そんなことを仕事の中で実感するようになり、実際に成績も上がり管理職となります。
そして、今は間接部署に異動して、DX(デジタルトランスフォーメーション)を使って効率化を推進する仕組みづくりをしています。また、働いているからこそのお困りごと”を解消するためのプロジェクトなども進めています。例えば子育てしながら、ちょっとずつ自分のキャリアを諦めてしまっているような人がまだまだ多いように思うのですが、子育てしながらもキャリアの可能性を広げていけるような社会にしていけたら、と思っています。
上司の問いかけから始まった「10年後のビジョン」への挑戦。キャリアの延長線上に見えたコーチングへの可能性
――高瀬コーチがコーチングに興味を持ち始めたきっかけは何だったのでしょうか?
30代後半に差しかかり、自分自身のキャリアについて改めて考えはじめたことがきっかけです。そのとき、これまで人材ビジネスに携わる中で、 多くの方のキャリア支援をしてきましたが、それが苦ではなく、むしろ楽しかったということ、加えて、兼業や副業といった多様な働き方、「人生100年時代」や「キャリアオーナーシップ」といった概念が広がる中で、パーソナライズされたキャリア形成支援マーケットの拡大に、大きな可能性を感じました。その中で、自分の介在価値を発揮していきたいと思ったのです。
さらに、上司から「髙瀬が構想する10年後の社会はどんな社会?」「これまでの経験で培ったビジネス力でその構想する社会に近づく為の課題は何?」とコーチング的な問いかけをされていた時期もありました。このこともひとつのきっかけだったように思います。また、私は「75歳まで明るくイキイキ働きたい」という想いもあり、今後の思い描くキャリアとコーチングの親和性が高いと感じました。まとめると、人材ビジネスで培ったこれまでの経験、これから拡大していくであろうパーソナライズ化したキャリア形成支援マーケットへの貢献、加えて75歳まで働きたいという、ありたい姿。この三つが重なったところにコーチングがあると思っています。
やっぱり自分にしっくりくる人を一人でも増やしたいんですよね。
「自分にしっくりきている」という状態は、つまり自分らしく生きていることや、人に必要とされている実感があることなど、人によって違うところかもしれませんが、そこに関われていることが、私にとっては理想的な状態だと思っています。
――このような思いから、コーチングスクールに通い始めたのですね。
そうですね。仕事と並行しながらコーチングスクールに通い、資格を取得しました。最初のスタートは社内コーチとしての活動でしたが、その後、スクールの卒業生とセッションの練習をしていくなかで、その方々がクライアントになってくれたり、SNS経由でお問い合わせを頂いたり、徐々にビジネスとしてコーチングをご提供する機会が増えてきました。
――会社員とコーチングの二足のわらじで見えてきたものはありますか?
人材ビジネスの現場では、会社のリソースを活用しながら、生成AIの促進プロジェクトを通して営業効率を上げたり、仕事と家事・子育ての両立ができるように業務提携のプロジェクトを進めたりといったサポートを行っています。一方で、個人のビジネスコーチとしては、クライアント一人ひとりに深く向き合い、寄り添いながら、その人が描く「ありたい姿」の実現に向けて伴走することができています。振り返ると、人材ビジネスとコーチングの両者を経験しているからこそ互いに良い相乗効果が生まれているのだと実感しています。
――今のコーチングのお仕事の状況を教えてください。
週に3〜4回ほどセッションを行っています。クライアントは主に30~40代のビジネスパーソンです。また、私自身が開発した「キャリア・リブランディングメソッド」をベースに、それぞれのクライアントの状況に合わせた支援を提供しています。このプログラムでは、まずその人の本来の才能を探し出し、それが生かされていた環境を一緒に探求します。そして、それらをこれまでの経験やスキル、さらにこの領域は好き!という方向性と融合させ、可視化していくことを目指しています。多くの方が「どの方向に進むべきか」「何を優先すべきか」と迷われる中で、伴走者として一緒に考えることで、クライアントに勇気や安心感を提供できると考えています。
――特に印象に残っているクライアントはいらっしゃいますか?
特に印象に残っているのは、ある30代前半のクライアントの方です。その方に「今の現状から想像できるあなたの未来は、大切な人に自信を持って語ることができますか?」と問いかけたことが転機となりました。この問いをきっかけに、「自信を持って語れる未来は今のままでは見えない」ということに気づかれたんです。そこから真剣に自分自身の「ありたい姿」を考え抜き、一大決心となる転居を伴う転職を実現されました。また、さらに転職先で新たなパートナーとの結婚も決まり、クライアントが自ら主体的にキャリア(生き方)を選択した瞬間に立ち会えたと感じています。セッション後も繋がりが続いていることも含めて、強く印象に残っていますね。
――そんな大きな変化に立ち会えるのは、まさにコーチ冥利に尽きる瞬間ですね。コーチングを行う際に、特に心掛けていることがあれば教えてください。
私がコーチングを行う際に掲げている屋号は「ビジフィア」という言葉が入っています。これは「ビジョン」と「フィール」を組み合わせた造語で、私がコーチングで大切にしている考え方を表しています。キャリアコーチとして重要だと考えているのは、クライアントが思い描く「ありたい姿(ビジョン)」を明確にし、その可能性を「感じ取る(フィール)」ことです。そして、クライアント自身にもその可能性を実感してもらいながら、無理なく可能性を広げていくお手伝いをしています。コーチングでは、思考を深めたり、言葉にしたりするプロセスを大切にしますが、人は感覚的に物事を決めることも多いんです。その感覚を見逃さず、丁寧に拾い上げることで、クライアントの可能性をさらに広げることができると考えています。
――セッション中によく使われる問いについても教えてください。
「どれくらいの本気度で思っていますか?」という問いは、よく使います。この質問を投げかけることで、自分のありたい姿が願望レベルで漠然としたものだったと気づく方もいますし、逆に「迷わず本気です」と自信を持って答えられる方もいます。覚悟の度合いが行動力に直結するため、クライアントが自分の思いをどれだけ本気で抱いているのかを、しっかりと確認するようにしています。
me:Riseを通して実現したい「自分にしっくりくる人であふれる社会」
――なぜme:Riseでキャリアコーチをされようと思ったのですか?
Rubatoという会社と共に成長していきたいと考えたからです。もちろん、自分でコーチングを提供する場を作ることもできますが、me:Riseにはコーチングの質を追求する4段階の厳しい選考プロセスがあります。この取り組みから、本気でコーチングのクオリティを重視していることを実感しました。
また、代表の柗上さんとお話しした際に、利他の精神を持って行動できる人なのだなと感じることができたため、こだわりの詰まったこの組織の一員になってみたいと考えました。さらにキャリアヒアリングというサービスや、継続セッションを通じてクライアントと長く伴走できるコーチングの構成にも深く共感しました。
――今後のビジョンについてお聞かせください。
先ほども少しお話したのですが、私には「自分にしっくりくる人であふれる社会に」というマイパーパスがあります。目の前のクライアント一人ひとりと向き合いながら、一歩ずつ実現していきたいと思っています。また直近ではボディコンテスト大会への挑戦を目標にしています。それはキャリア形成だけでなく、フィジカル面でも「ありたい姿」を支援できる存在になりたいという思いがあるからです。年齢とともに、キャリア形成の土台となってくる身体への不安を感じる方も多いですが、そうした悩みも含めてトータルでサポートできるコーチでありたいと思っています。
――最後に、読んでいる方に伝えたいメッセージはありますか?
キャリアコーチングは突き詰めると、「なぜ働いているのか?」ということについて、コーチとクライアントが二人三脚で考え続けるということだと思っています。「自分はなぜ働いているのだろう」「これからどのようには働いていくのだろう」という問いにじっくり向き合い、未来を描くお手伝いができれば嬉しいです。
【Profile】
髙瀬智之
大卒後、人見知り克服の為にアパレル販売からキャリアを始め、社会人4ヶ月目で店長着任、1年後に売上全国トップを達成。この経験から、自分らしさを活かす可能性に目覚め、人材業界へ転身。外資系企業での大型プロジェクト統括、育児のため1年間無職で生活した後、パーソルテンプスタッフ(株)で営業企画、市場開発、営業部門、DX企画部門の各責任者を歴任。4,000人を超えるキャリア面談経験から「才能×経験・スキルを融合した、キャリア・リブランディングメソッド」を確立し、プロコーチとしても活動中。人が持つ本来の可能性を無理なく広げるセッションが得意。
・銀座コーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ
・プロティアン認定ファシリテーター
・プロティアン・キャリア検定合格