コーチ紹介インタビュー
将来の選択に主体的でなく、周りに言われるままに進んできた学生時代。就職しても将来像が見えず、正解を探していた私がコーチングとの出会いで自覚していなかった自分を理解できた
―― キャリアコーチになるまでのことからお伺いしていきたいのですが、まずは子供の頃のお話からお聞かせいただけますか?
東京都多摩市に生まれ育ちました。緑の多いところで育ったので、小学生の頃は木登りや靴飛ばしなど、外で元気に遊んでいた記憶がありますね。一方で、一人で図書館に行き、本を読んだりすることも好きでした。どちらにしても、家にはあまりいませんでしたね(笑)。
中学生以降も部活や勉強をがんばる普通の子供だったと思います。
進路選択については、大学まで自分の意思はあまりなく受験に向けて勉強し、親や塾の先生に勧められた進路の中から決めてきました。今思えば自分の将来の選択に全く主体的でなかったんですよね。そのことで、後にキャリア選択に非常に苦労しました。
大学は文学部でしたが、教育学部の授業も選択することができたので、いくつか興味があるものを受けていました。中でも特に興味があったのは教育学です。「どうやって子供たちの個性や多様性を生かすのか」という内容で『教え込むというよりは人を生かす教育』の授業でした。今思えば、コーチングに近しいところにその頃から興味があったのかもしれないですね。
選択した学部は夜間学部だったので、日中はアルバイトをして、それから大学に通っていました。アルバイト先はフードコートやケーキ屋さんなどでしたが、年齢も趣味も異なるいろんな人と出会い、沢山の刺激をもらいました。働いてお金を稼ぐことで、自立した感覚ももつことができたんすよね。貯めたお金で旅行に行ったりしていましたし、充実していたので、勉強との両立は大変と思うことはありませんでした。
―― 充実した学生時代を過ごされたのですね。それからどのようなキャリアを歩まれていったのでしょうか?
将来の自分の姿がなかなか思い描くことができなくて、就職活動で非常に悩みました。大学卒業後、就職したのですが、その後も何度か転職を経験しました。その転職経験が私のキャリアを考える転機となりました。
就職してからも、「自分がやりたい事ってなんだろう」「自分はどうなりたいのだろう」と、自分の将来像が見えず、逆にどうなっていったら正解なのだろうと答えを探していたような気がします。
その時々で自分なりに考えて転職し、成長してきたと思うので後悔はありませんが、転職して正直うまくいかなかったこともありました。目の前の仕事に一生懸命向き合い、成果を出し、高い評価をしてもらっているのにも関わらず、自分としては充実感が得られないこともあったんですよね。がんばっていたけど苦しかったんです。今となっては、自分の軸が曖昧だったのだなと思います。
先程もお話したように、私は大学まで自分の進む道を自分で考え選択せずに過ごしてきてしまったので、「自分はどうなりたいのか」「そのためには進学や就職はどうしたらいいのか」という答えを自分自身で出せていなかったんです。
そんな中、たまたま友人の勧めでコーチングを受ける機会がありました。コーチングセッションを受けていく中で、仕事をする上で自分は「何に熱意を傾けているのか」、「何を大事に取り組んでいるのか」ということがキーワードとして出てきました。あの時の感覚を今でも覚えていて、「あ、そうなんだ」って腑に落ちる瞬間があったんです。そこから自分の考え方や、何を大事にしているのかという価値観が溢れ出てきて、今まで自覚できていなかった自分を理解し、自分自身を取り戻していく感覚があったんですよね。
そこから、自分に自信がつき、モチベーションも上がっていったという印象的な体験です。出てきたキーワードをもとに、学びを広げていき、行動に起こすことによって自然と活動の幅や付き合う人も広がり、充実感が得られるようになりましたし、人生もより楽しめるようになりました。
そこから自分でもコーチングについて学び始めることになります。ちょうど20代後半、社会人7〜8年目くらいの頃だったと思います。
―― それまで、学生時代も頑張って充実感を感じられていたとおっしゃっていましたが、自分を取り戻した後の充実感と違うということでしょうか。
はい、違いますね。今思えばそれまでは本当の充実感というものを味わってこなかったのだと思います。自分の中からこれをやりたいと湧き出てきたものではなかったので、充実感とは言えませんでしたね。自分で「これがやりたい」と思って仕掛けていき、ひとつずつステップを上がり視界が広がっていくような感覚が本当の充実感だと今は思っています。
―― それが原体験として今の山崎さんをつくっているんですね。コーチングはどのくらいの期間受けたのですか?
私がコーチングで衝撃を受けたキーワードが出てくるまで、セッションは3回位だったと思います。コーチと話している中でこんな発見があるのだと驚きましたね。本当にあの時にコーチングを受けてよかったと思っています。
その後、私もコーチングを学び始めましたが、初めはプロコーチにはなろうとは全く思っていなかったので不思議ですね(笑)
コーチングによって、組織を活性化させ生産性を上げるお手伝いをしたい
―― その後、なぜプロコーチになろうと思われたのですか?
自分自身がキャリアに悩んだ経験と、以前いたベンチャー企業での経験が大きいですね。
先ほどお話したように、私はキャリア選択において非常に悩んだ経験があります。コーチングを受けて、自分の軸に気づき、そのことによってモチベーションが上がり行動が変化していく様子を実際に体験しました。この経験を、同様にキャリアで悩んでいる方達にも経験してもらいたいと思うようになったんです。また、コーチングを学ぶ中でも、クライアントさんがコーチングを受けることで、私と同じように気づきを得て変化をしていく様子を見て、こういう瞬間にたくさん立ち会っていきたいと思ったんですよね。クライアントさんが自分の強みに気づいて、自分らしく自分の手で可能性を広げていく、そういうお手伝いができればと思うようになりました。
また、ベンチャー企業では、「人は自分の好きなことや得意なこと、心動かされるようなことにモチベーションが上がり、それを仕事とした時、主体的に行動し、仕事のパフォーマンスも上がる」ということを経験しました。
今思うと、私は同僚にコーチング的な関わり方をしていたんですよね。相手が「どんなことに興味があるのか」、「得意なことは何か」、「どんな仕事だったら興味があって好きなのか」、「いまの組織にどんなことを感じているのか」など、一緒に働く仲間を理解しようと雑談の中で色んな会話をしていました。
私が仕事をお願いする際、その課題に対して「志向性が近くて、興味・関心があって、得意である」ような人にお願いしてみると、頼まれた側もモチベーション高く、楽しく仕事に取り組んでくれ、結果クオリティの高いものができました。それによって組織も活性化されていくことを経験したんです。個人の仕事への向き合い方によって、組織も変わっていく様子を目の当たりし、そういう瞬間をたくさん作りたいと思うようになったんです。
その時の経験から、コーチングは組織の中でも生かせると思い、プロコーチを目指すようになりました。
その他、キャリア教育活動を行っている団体に所属し、公立高校の授業の中でキャリア教育について授業をしてきました。自分自身の経験から、早いうちから自分に関心を持つことの重要性を高校生に伝えられたらと思いから活動をしています。周りの物差しではなく、自分で自分の軸を知り、自分の進路を自分で選択して歩んでいくという経験をしてほしいと思っています。授業では「自分は何を大事にしているのか」、「自分の価値観は何か」に気づく機会を届けています。
―― プロコーチになろうと決めた後、どのように進まれたのですか??
CTIジャパンというところで基礎からプロコーチになるための講座まで受講しました。有償のコーチング経験を100時間積む実践を終えて認定を受けた後は、本業を優先しつつ、できる範囲でパーソナルコーチングを継続していました。その他、本業の会社の中で希望者を募り、社内コーチングをすることもありました。キャリア教育活動の中では直接コーチングをするわけではありませんが、授業のプログラムの中にコーチングエッセンスを取り入れたり、生徒との会話の問いかけで活用したりという形でやっていました。
コーチングにおいてはいままで完全に個人で行っていたのですが、今回ご縁もあってme:Riseに参画させていただきました。
キャリアで悩む人の解決手段としてコーチングが使えるというme:Riseの想いに賛同して参画
―― me:Riseを選ばれた理由はなんですか?
一言にコーチングといっても色々ありますが、『キャリア』というところを軸にしているのが私の考えに近いと思ったからです。私がプロコーチになろうと思ったのは、キャリアに悩む人を支援したいからです。コーチングにおいて『キャリア』というのは主要なテーマになるのですが、コーチングを受けたことがない人からするとなかなか解決の糸口としてコーチングにたどり着かないことが多いと思っています。私も友達に言われるまでコーチングの存在を知りませんでしたからね。
自分のキャリアについて、悩んだり考えたりしたことのない人はほとんどいないと思います。だから、キャリアで悩む人の解決手段としてコーチングが使えるというme:Riseの想いに賛同して参画することにいたしました。
(※写真は今年5月に誕生したばかりのお子様とのツーショット)
―― キャリアコーチの山崎さんから見たme:Riseの良さとはどんなところですか?
全ての人が悩む「キャリア」というテーマにちゃんと寄り添っているところですね。あとは、コーチングって受けたことのない人からすると、とても分かりにくい部分があると思うんですよね。どういう風に進めていくかというステップがちゃんと提示されているところが良いと思います。これまでコーチングを受けたことがなく、キャリアに悩んでいる人にとても有効なサービスだと思っています。
―― 山崎さんがセッションでよく投げかける問いはありますか?
パワフルな問いとして、「何の制約もなかったとしたら、本当は何をしていますか?」と聞いています。大きな質問なので、即答するに困ってしまうかもしれませんが、「本当は」と聞かれると皆さんドキッとするみたいです。考えもしない自分の望みがぽろっと出てきたり、「そういえば、こんなことやってみたかったな」という答えがクライアントさんから出た瞬間を見てきて、やっぱりこの質問はパワフルだなと思いましたね。
―― 印象に残っているクライアントさんやセッションはありますか?
全てのセッションが印象的ですが、私がコーチングで拘っていることは、自分について発見する喜びとそれによる自分のモチベーションの変化を感じてもらうこと。
そのために、セッションの中ではクライアントさんのこれまでの経験から自分の価値観、自分がどんなことにこだわりを持っているのか?行動の源泉を探す問いを投げかけます。テーマにかかわらず、発見したら、「これって○○さんの価値観、こだわりかな?」と一緒に言葉にし、クライアントさんが自分のありたい状態やよい選択をする軸づくりをサポートをしています。
あるクライアントさんのことですが、初めてのコーチングセッションだったんですね。自分の進路について次のステップをどうしようと色んな可能性に迷っていたんです。そんな中で、これまでの経験からこのクライアントさんが大事にしてきた価値観、こだわりを一緒に言語化していきました。
大事にしたいことが自分自身でも確認できたことで、自分の中での優先度が整理されていき、先ほどまでの迷いはなくなり、明確に次のアクションを決められていたのが印象的でした。
このクライアントさんだけではないのですが、自分の軸が見えると人はパワフルに自分が何をすべきが決められますし、また60分のコーチングセッションで「人ってこんなに変わることができるんだな」ということも改めて確認させられました。
キャリアコーチとして、自分でも働き方の可能性を実験している
―― 現在のお仕事、働き方について教えていただけますか?
今は企業に勤めており、人事コンサルティング領域で制度の改訂を担当しています。
私の仕事全体をハード面とソフト面で分けると、人事制度などの仕組み作りを扱う本業での仕事はハードの部分。人の中身、モチベーションなどそういうソフト面の部分をコーチングでやっている感覚です。最近はワークショップについて学び、コーチングやキャリアに関するワークショップなども開催しています。高校生に向けてのキャリア教育もソフト面に含まれますね。勤めている会社は副業が認められているので、地方の高校でのキャリア教育の授業の場合は平日のお休みを取って行ったりしています。
―― いくつかの仕事を抱えるパラレルワークという働き方をしている山崎さんですが、プロコーチとしてだけでなく企業に勤めている意味とは何ですか?
一番の大きな理由は、チームに所属していたいという思いですね。プロコーチとしての仕事は基本的に個人で行ってきましたが、私は組織というものがとても好きなので、組織に属してチームの一員としても仕事をしていきたいと思っています。
組織とは、いろんな価値観を持つ人が集った個人の集合体です。その個人はみんな違っていて、それぞれ特性を持ち、スキルも違います。それがうまく噛み合うとチームとしてバランスが取れ、個人でやる以上のいい成果が生まれます。そういうチームを一緒に作り、共有していきたいと思っています。組織が好きなので、そこで働いている個人を応援し続けている感じですね。
自分のキャリアもどういう可能性があるか常に実験している感じですね。キャリアコーチなら「規制があるからできない」ではなく、どういうキャリアを作っていけるかなと自分でもやれることをやっていきたいと思っています。
今後はコーチングの活動の幅を広げて、多くのクライアントさんや仲間と出会いたいと思っています。それをme:Riseでも実現していけたらいいですね。
【Profile】
山崎 奈央
(株)リクルートでHRサービスの営業として数百社に及ぶ企業の人事課題と向き合う。退社後、テレワークマネジメント社に参画。立上げ期のサービスアセットを担う他、テレワーク導入コンサルティングに多数携わる。現在はパーソル社に籍を移し、人事コンサルタントとして制度構築、組織開発に従事。対話やワークショップを組み入れた現場の意識改革を得意とする。
また、パラレルキャリアとして(一社)社会創発塾のキャリア教育団体イノライブで、学生を対象とした授業・イベントプログラムの設計、ファシリテーション、運営理事に従事する他、20~30代の若手・中堅ビジネスパーソンを対象にしたパーソナルコーチングにも取り組んでいる。
国際コーチ連盟認定CTIトレーニングプログラム基礎・応用・上級コース修了、CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ (CPCC) 、青山学院大学プログラム認定ワークショップデザイナー