Coach Interview

コーチ紹介インタビュー

国家公務員からボランティア活動、商社、メーカーまで。多様な職業経験が今に活きている

 

 

――これまでのキャリアについて教えてください。

 

大学卒業後、超就職氷河期と呼ばれる時代に、当時の郵政省に国家公務員として就職しました。郵便局で主に貯金、保険を扱う窓口業務、営業をしていましたが、もともと海外で生活したいという夢があり、3年間勤めた後、ニュージーランドの現地の小学校でボランティアティーチャーとして、日本語や日本文化を教える活動に参加しました。

 

そこで子どもたちが生き生きと学ぶ環境に感銘を受け、「学ぶことが楽しい」と感じられる場を作りたいという想いが芽生え、それがその後、現在理事を務めるNPO法人が運営するオルタナティブスクールとの出会いや、学びのあり方への探求へとつながっていきました。

 

帰国後は、塾講師のアルバイト、大手電機メーカーでの派遣事務、アパレル系輸入商社での正社員勤務など、さまざまな職種・雇用形態を経験しました。

 

ただ、正社員として入社したアパレル系商社では、環境の厳しさや体調不良からわずか9ヶ月で退職することになりました。その後の約1ヶ月半は無職の期間となり、人生の中でも特にしんどかった時期でした。当時は一人暮らしで、心身ともにバランスを崩し、起き上がるのもつらい中で、何とかハローワークに足を運ぶ日々を過ごしました。

 

この時期を経て出会ったのが中西金属工業です。最初は派遣社員として入りましたが、働くことの喜びを心から感じられた場所であり、本当に人生を救われたと思っています。最終的には正社員となり、約20年間勤め、最後の5年間は管理職としてマネジメントにも携わりました。管理職としての最初の1-2年は、何かも手探りの状態で、がむしゃらに走っていた感覚でした。本格的に「リーダーシップとは何か」を自分なりに掴めるようになってきたのは、3年目以降。NPO法人コクレオの森での経験や、そして何よりコーチングとの出会いが大きかったと思います。

 

コクレオの森では「自分も人も大切に」という理念を掲げており、人を大事にするためには、まず自分を大切にするという考え方に強く影響を受けました。そして、個人的にコーチングを受ける中で、「私が楽しいと感じる瞬間ってどんなときだろう」と自分に問いかけるようになり、自分のリーダーシップスタイルは「人を活かすこと」にあると気づき始めたんです。

 

いわゆるシェアドリーダーシップと言われるような、メンバー一人ひとりが場面ごとにそれぞれのリーダーシップを発揮しながら進めていく形が、自分のスタイルだと感じるようになりました。以前は、すべてを自分で抱え込もうとしていたのですが、必要なときには他者の力を借りながら、チームとして成果をあげていけばいいと考えるようになり、チームメンバーにもそういうリーダーシップを自然と伝えられるようになってから、自分も肩の力が抜けて、より良いチーム運営ができるようになったと思います。

 

30歳を過ぎるまで、私は国家公務員からボランティア、商社、アルバイト、派遣、正社員と、さまざまな業種や雇用形態での就業を経験してきました。どこか一つの場所で積み上げたというよりは、さまざまな現場で試行錯誤を重ねてきた時間だったと思います。当時は「これで大丈夫なのか」と思うこともありましたが、振り返るとそのすべてが今につながっていると感じています。

 

 

 

「足りない」ではなく「チャレンジャー」。コーチからの言葉が視点を変えた

 

―――コーチングに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

 

管理職になった頃、社内でコーチングを受ける機会があったことがきっかけで、興味を持つようになりました。その後、管理職2年目で自信をなくしていた時に「自分には足りないところばかりだ」と思い詰めていたのですが、その時のコーチの「足りないのではなくて、チャレンジャーなんですよ。チャレンジャーだからこそ、足りない部分がわかるんです」という言葉で一気に自分の見る世界が変わり、本当に救われました。新たな扉を開けた感覚だったことを今でも覚えています。この経験でコーチングの力を実感し、自分自身も学び始めました。

 

 

また、会社で課題解決会議のプロジェクトを任され、コーチ、ファシリテーターとして様々なチームと関わる中で「チームの可能性を引き出すにはどうしたらいいのか」を深く考えるようになり、さらにコーチングの必要性を感じるようになりました。そこで、スクールでコーチングの学びを本格化させました。


――そこからプロのコーチとして仕事するようになった経緯を教えてください


スクールでは最終のプロコースまで進み、徐々に独立も視野に入れるようになりました。職場内プロジェクトでの実践や、問いを通じた議論の促進にも役立ち、学んだスキルが業務やチームビルディングに貢献している実感がありました。その中で、「このスキルをもっと広く活かしていきたい」と考えるようになりました。

 

副業としてコーチングの依頼を受けるようになり、紹介から企業の次期リーダー層への支援にも広がっていきました。

クライアントからの反応や、キャリアの悩みに寄り添う中で、「自分が本当に力を発揮できるのはこの仕事かもしれない」と思える瞬間が増えていったんです。

 

また、自分はクライアントとしての経験も長く、特に「言語化したときの違和感」に敏感だった私は、その感覚がコーチングにおいて大きな力になると気づきました。相手のわずかな違和感を捉え、「今、本心から話せているかな?」と問いかけることが、クライアントの深い気づきにつながることがあります。「こんなふうに自分の感覚に寄り添ってくれるコーチングは初めて」と言っていただけることもあり、この仕事をこれからも大切に続けていきたいと心から思っています。

 

 

仕事と組織の“存在目的”を言語化する。キャリア支援を超えた組織支援へ

 

 

――どのようなクライアントの方が多いですか?

 

30代後半から40代後半のビジネスパーソンが多いですね。会社で中堅層として活躍されている方や、次期リーダー候補、フリーランス、個人事業主など、キャリアの“真ん中”にいる方が中心です。

 

管理職を期待されマネジメントに進むべきか専門職を極めるか迷っている方や、「このタイミングで転職しないと後がないのでは」と焦る方も多く、キャリアの分岐点で揺れている方の相談が多いと感じます。

 

特に女性の場合は、私自身が女性管理職として経験してきたことが少しでも参考になればと、自分の体験を交えたアドバイスをすることもあります。また、部署異動のタイミングで「自分がこの部署に来た意味」に悩む方も少なくありません。その際には、部署やチームの存在目的を言語化するセッションを行うこともあります。

 

例えば、あるクライアントの方と、その部署が会社全体にどんな価値をもたらすのかを一緒に定義づけたことがありました。その上で、「その中であなたはどういう存在でありたいですか?」と問いを重ねていく中で、自分の役割を言語化でき、「だからこの仕事に向き合うんだ」と深い納得感を持って行動に移された印象的なセッションもありました。

 

これは、私がマネジメント時代にこだわっていた「自分の部署は何をする場所なのか、どういう役割を果たすべきなのか」を定義し続けた経験がベースになっています。そして、それを自分の役割と共に言語化して腹落ちすることが、内発的な動機づけにつながるのだと感じています。

 

 

望む未来を描いてから、内面の声を聴きにいく

 

――セッションで大切にしていることは何ですか?

クライアントが「どこに向かいたいのか」をまず明確にすることを大事にしています。その上で、何が原動力になっているか、また、そこに向かいたいが向かえない理由や、足を止めている感情に目を向けていきます。

 

特に、自分の中にある「複数の声」を丁寧に扱うことを意識しています。「望む自分」と「怖れている自分」など、さまざまな自分の声に耳を傾けることで対話が深まる感覚があります。

 

感情の源にある価値観や願いを一緒に見つめながら、その人の中にある「リソース」を再発見し、小さなアクションに落とし込む。そんなセッションを心がけています。

 

 

――セッションでよく問いかける問いを教えてください。

 

感情の根元を見る問いかけをよくします。「何がその感情を動かしていると思いますか?」「何がその感情を揺らしているのでしょう?」といった問いで、感情の根本にある価値観やそこにつながる物語に一緒に触れていきます。

 

また、「内なるもう一人の自分」を取り出してイメージ化してみることもあります。「そのもう一人の自分は何を感じていますか?」「何を望んでいそうですか?」といった問いで、自分の中にある複数の視点や感情に気づくサポートをしています。

 

さらに、今の歩みの中で「助けになってくれそうなものは何か?」を問い、自分が持っているリソースを再確認したり、もう少し手を伸ばせば得られそうなものを確認することも意識しています。そこから、日常に少しでも変化を起こすための「新しい一歩」を考えます。指一本でもいいからほんの少しでも動かしてみる——そんな小さなアクションにつながる問いを大切にしています。

 

 

本質的な自己理解にこだわるme:Riseの姿勢が、自分の目指すコーチングと重なり応募

 

――me:Riseを選んだ理由を教えてください

 

me:Riseのホームページの「me:Riseの想い」というページで「Self-awareness ✖ Active Information Search」という文字を見たとき、自己理解と探求型情報収集によるキャリアデザインについて書かれていて、とても本質的だと思ったんですよ。“コーチング風”のサービスも多い中で、本質的な自己理解に重きを置く姿勢が、自分の思いと重なると感じたことが一番大きいです。

 

応募した当時、いろんなことが重なってとても忙しかったのですが、一日の仕事が終わった後の深夜1時とか2時まで、すごく考えて情熱を傾けて応募フォームを書いた覚えがあります。書きながら「あー、そうだよな、私がやりたいコーチングってこういうことだなぁ」と実感したんですよね。

 

自分自身をまず深く探求して理解するっていうところが私は一番大事だと思っていて。そこからビジョンとかキャリアを考えるっていうアプローチが本当に素敵だなと思ったのが一番のきっかけですね。

 

セッション経験時間はまだ少なかったのですが、「この場に関わりたい」と強く思い、応募しました。

 

――コーチの視点から見たme:Riseの良さを教えていただけますか?

 

まず、me:Riseはコーチングの本質を深く追求し、それをサービスとして提供しているところが素晴らしいと感じます。また、「キャリアヒアリング」の仕組みがとてもユニークで、コーチングで内面を探求しながら、サポーターさんに実際に聞きたいことを聞くことができるところも非常に魅力的だと思いました。

 

また、料金設定が誰にとっても手が届きやすく、継続しやすい価格である点にも共感しました。代表が「これからコーチングは、ジムやジョギングや英会話のように、ビジネスパーソンにとって当たり前のものになる」と語っているように、それを見据えた設計になっているのだと感じています。

 

実際にコーチとしてSlack上のコミュニティに参加してからは、全体性が非常に高い組織であることも実感しました。コーチ全員が意欲的で、運営チームも含めみんなでスキル研鑽に取り組む姿勢もとてもよいところだと思っていますし、日々刺激を受けています。

 

 

行動に行くまでのところ、そこまでもサポートできるようなコーチングをしていきたい

 

――これから目指したいこと、実現したい夢などがあれば教えてください。

 

クライアントさんごとに悩みとかテーマが違いますが、より納得のいく選択をすること、気づくことは大事ですが、そこに新たな行動が加わるからこそ自己変容が起こると思っているんですよね。その行動に至るまでのところ、そこまでもサポートできるようなコーチングをしていきたいと強く思っています。

 

そしてもうひとつは、組織やチームの「存在目的」や「ビジョン」を言語化し、それに沿った役割や働き方を再設計していくような支援です。自分たちのチームのビジョンを自分たちで作っていくみたいに、「自分がここにいる理由」や「自分の役割」を自分らしさとともに理解し、実感を持って働くことが、働く人の幸せだけでなく、チームや会社、そして社会の幸せにつながるように思っています。そういったところにコーチングスキルを生かしていきたいです。

 

さらに将来的には、コーチングにデザインや他領域を組み合わせた新しいサービスもつくっていきたいと思っています。me:Riseでもそんな挑戦ができたらいいな、一緒に面白いことが出来そうだなと感じています。

 



【Profile】

近江 佳代子

就職超氷河期に大学を卒業。4度の転職を経て、異なる業界・職種での経験を重ねながら、自らの「働く意味」を問い続ける。中西金属工業株式会社では約20年間、事業部の営業企画や本社経営企画にて管理職を務め、複数の事業部で業績向上を目的とした課題解決会議を主導。現状分析、課題抽出、KGI・KPI設定、アクションプランの立案・実行支援を担当。

現在はコーチとして人と組織の成長に伴走する傍ら、学校づくりを手がける認定NPO法人コクレオの森の理事としても活動。

長年「他人軸」で生きてきた自身が「自分軸」と出会ったことで、双方の視点を理解した上で届けられるコーチングを提供。目の前の人が、自分らしく生きる力に気づいていくプロセスに寄り添うコーチングが特徴。

 

・THE COACH ICP インテグレーションコース(プロコース)修了