Coach Interview

コーチ紹介インタビュー

 「大好きな先生みたいになりたい」教師を目指した学生時代から証券会社勤務を経てアスリートコーチになった偶然の出会い

 

―― コーチになるまでどんなご経験をされていたのか教えていただけますか?

 

以前は会社員でした。証券会社で最初は営業だったのですが、その後、本社の債券の部署と投資信託を扱う部署で販売推進とマーケティング、研修の仕事をしていました。それぞれの部署で扱う商品が違いましたが、どちらも本社ということで営業以外のことは何でもやる『何でも屋』でした(笑)。期間としては営業を4年、債券の部署で6年、投資信託部門で7,8年くらいだったと思います。

 

 ―― どんなきっかけで証券会社に入社したのですか?

 

超就職氷河期だったので、入れたところに入ったという感じですね(笑)。

ただ、父親が銀行員だったので、なんとなく金融業界に馴染みがあったということもあります。

もともと教師志望で教員免許も取って、先生になるつもりだったんです。私自身、史学科卒業なので歴史の先生になりたいと思っていましたが、当時は超就職氷河期で先生にもなかなかなれない状況でした。英語の先生は割と入れ替わりが早く若い先生がいましたが、歴史の先生は年配の先生がいっぱいで(笑)、なかなか受け皿がなくて断念しました。そこまで踏ん張らなかったということもありますね。それよりもちゃんと卒業した年に就職したいという気持ちがあり、たまたま入社したのが証券会社だったということです。

 

会社では、商品の説明をするということで本社から派遣されて、毎年新人研修をしていました。当時は本社で女性の総合職が少なかったので、キャリアアップも兼ねて若手の女性向け研修をしたり、座談会で自分のキャリアを話したり、お客様向けに商品のセミナーなどもよく実施しました。お客様向けセミナーは忙しい時には毎日、昼・夕方・夜の3回実施するなどセミナーづくしの時もありました。扱う内容は違いますが、教育・研修という意味でいうと、お金の面でのサポートをずっとしていました。それがコーチングという形になったときに、人のメンタル面でのサポートに変わっただけなので、今思えばわりとキャリアとしては繋がっているなと感じています。

 

 ―― 教師志望だったということは、もともと人に伝えたり教えたりすることに興味があったのですか?

 

教えるのが好きだったということもあるのですが、小学校を卒業するときの担任の先生が大好きで、先生みたいになりたいと思っていたんです。その先生に「私は先生になります」と宣言して卒業したんですよ。最初は小学校の先生になりたいと思っていたのですが、そのうち(教えたい対象が)高校生に変わりました。その時に好きだった歴史の先生みたいになりたいと思ったので、史学科に入学しました。先生との出会いで「こうなりたい!」と思って、先生を希望したという感じですね。小学校のとき大好きだった女性の先生とは、今でも年賀状のやりとりをしています。当時は私より若いくらいの年齢だったと思いますが、その後、校長先生にまでなられて、今は引退してお孫さんもいらっしゃるんですよ。

 

 


 ――ど んなきっかけがあってコーチになろうと思われたのですか?

 

もともと心理学とかは好きだったんですよね。以前私は2年間、育休を取り、電車には乗らない生活をしていました。その時に再び満員電車に乗って会社に行く生活を送るのは厳しいなぁと思っていたころ、子供を慣らし保育で保育園に預けられたことをきっかけに外に出て何かを習いたいと思い始めたんです。ちょうど電車に乗って行きやすいところにあったのが、カウンセリングやメンタルトレーニングの学校で、そこには「親子のコミュニケーション」講座があったので通いはじめました。実はマッサージとかリフレクソロジーの学校にも興味があったのですが、家から1時間半かかるところだったので断念したんですよね(笑)。メンタルトレーニングの学校はたまたま家から30分で行ける距離だったんです。

 

説明会で話を聴いてみたら、仕事に活かせるなと思ったんです。その時は転職する気は全くなくて、自分のキャリアアップの為にメンタルトレーニングの勉強をしてみようと思って学び始めました。最初は趣味の範囲だったので、それを仕事にすることは一切考えていませんでした。その学校の先生にオリンピックのメダリストの方がいらっしゃって、その先生のアスリートのメンタルを解説する講座を聞きに行ったんです。初めてアスリートのメンタルサポートがあるということを知って、そこから「こういうことをやってみたい」と強く思うようになりました。

 

ちょうど育休に入って初めて世の中に色んな人がいるということに気づいたタイミングでもあったんです。それまで会社内にずっといて、会社がすべてだったので、日中歩いている人を見ては「あの人は何をしている人なんだろう?」「働かないのかな?」と思っていたんですよね。そこで世の中にはいろいろな職業の人がいて、いろいろな暮らし方があるということを知るにつれ、カルチャーショックを受けたんですよね。私は定年まで会社にいるつもりでしたけれど「転職する道もあるんだな」と思ったときに、メンタルサポートとの出逢いがあったので、一層やってみたいなと思ったんですよね。


 

 

定年まで働く人生とアスリートコーチになる人生、どちらも幸せだけれど、コーチングでエネルギー感が違うことを実感

 

 ―― やってみたいと思ってから、どうやってコーチになったのですか?

 

当時、Facebookを使い始めたことで、久しぶりに大学の同級生と繋がったんです。彼女も証券会社に勤めていたこともあってよく連絡を取り合っていた時期もあったのですが、久しぶりに話を聴くと会社を辞めてメンタルコーチをやっているとのことでした。私もメンタルトレーニングを勉強していると話したら久しぶりにランチをすることになったんです。

 

そこで、アスリートのメンタルサポートをやりたいという話をしたところ、コーチングを受ける機会を紹介してくれて、そこでメンタルトレーナーとしてオリンピック選手のサポートをする人生と会社員として定年まで働く人生をそれぞれ描いてみたんです。

描いてみたら定年まで働いて死ぬときもすごく幸せな人生なんですよ。それなりに出世して、その後リタイアしてゆっくりして、孫に囲まれて死ぬというような(笑)いい人生だったなぁという感じでした。

 

けれども、メンタルトレーナーになるために会社を辞めた場合、最初の2~3年は大変なんです。でも、選手をサポートしていくとその先の人生はものすごく楽しくて、死ぬときは笑って死んでいるみたいな感じで、エネルギー感が全く違うんです。とにかくいい人生だったと思えるんですね。それを体感して、「やっぱりメンタルトレーナーの方向にいきたい」という気持ちがガチっとはまっちゃったんですよね。当時は副業もできなかったので、会社を辞めて、メンタルトレーナーを目指そうと心が決まりました。

 

とはいえ、やりたい気持ちは固まったものの、「本当にできるのか?」とか子供が生まれた直後だったので、「お金はどうするの?」とか考えることもあって、現実に戻ったらやっぱり迷ってしまったんですよね。旦那さんに一応「こういうのをやりたいんだよね」とは伝えてみたものの「何をばかなことを言っているの?」と鼻で笑われておしまいになるという状況で、自分も「まぁそうだよね」という感覚でした。転職を一度もしたことがないのに全然違う業界に進むこととか、アスリートに知り合いがひとりもいないこととかを考えると勇気が全くでなくて、「やりたい」という気持ちと、「どうせ無理だろう」という気持ちとのせめぎ合いでした。

 

それでもやらないと後悔することだけはわかっていました。そこで、コーチの友人に相談して、そこから1年間彼女のコーチングを受けたんです。ちょうどリオオリンピックの3年前です。選手のコーチとしてリオオリンピックに行くには2年前には会社を辞めていなければいけないので、“この1年間で会社を辞めて準備する”ということを決めました。1年間コーチングを受けていく中で自分の覚悟が決め、家族を説得し、会社を辞めて、そこからコーチングスクールに通いました。その後、体操の実業団のメンタルトレーニングやセミナーをしていたご縁でオリンピックを目指す選手を紹介してもらい、念願のリオオリンピックに行くことができました。コーチングのお蔭で描いたことが叶ったと思います。

 

 


アスリート向けのコーチングと経営者・ビジネスパーソン向けのコーチングの違いはない

 

―― 今はコーチングも含めてどんなお仕事をされているのですか?

 

現在は、アスリートの方に限らず経営者、支社長の方など管理職の方々のサポートとme:Riseでビジネスパーソンのキャリアコーチングをしています。割合としては、経営者の方が多いです。そこからのご縁で社内研修の仕事もしています。研修内容は、コミュニケーション研修や自分自身をどう整えるかというセルフマネジメント、部下とのワンオーワン、部下のモチベーションを引き上げるための関わり方といったマネジメント向けのものなどです。

 

 ―― アスリートのサポートと経営者のサポートの違いはありますか?

 

あまり違いはないと思っています。アスリートは自分の好きな競技を追求していますし、経営者は自分がやりたいことを仕事としてやっている方が多いので、ベースはあまり変わりがないなと思っています。一般のビジネスパーソンの方についても先々違う人生があってもよいと考えている人はいると思いますが、今、目の前の仕事やキャリアをよりよくするためにはどうしたらよいのか?という視点で考えている人が多いので、あまり違いを感じないですね。 ただ、アスリートの場合は20代前半の方が多くて、経営者の方はそれよりも年齢が上なので、今立っている位置、過去の経験の量やこの先活躍できる時間の長さという点の違いはあると思います。とはいえアスリートも引退が早いので、そういう意味ではそれほど大きな違いはないと思います。両者とも共通しているところも多く、特に分けて考えていません。

 

 ―― アスリートと経営者の両方をサポートしていることでのメリットはありますか?

 

ビジネスマンにアスリートの事例を話したり、アスリートに「経営者のような全体を見渡せるような人はこういう考え方をしているよ」と刺激の一つとして話したりしています。例えば、同じ競技の違うチームの事例をアスリートの方に話したりすると立場が近い分、比較されているように感じさせてしまいます。同様にビジネスパーソンの方の場合も海外の事例を話したとしても、プライドを刺激してしまって受け入れられなかったりすることもあります。その点、違う分野の事例を話すと、「面白い、やってみようかな」と受け入れられやすいと感じています。

 

 ―― サポートされている中で特に印象に残っているコーチングセッションやコーチを受けた方の変化はありますか?

 

アスリートの方の話ですが、目標としていた大きな大会の予選会の3日前に足を捻挫してしまい、出場することができないかもしれないという状況になったんです。正直私も他のコーチも目標としている大会の出場は厳しいかもしれないと思ったのですが、本人はそんなこと全く思っていなくて、「大会の出場が決まったらできなくなる上半身のトレーニングや基礎練習ができるので逆に良かった」ととても前向きに捉えていたんですよね。それを聞いてすごいなと思ったんです。怪我をしてしまったことはしょうがないと割り切って、今できることは何かということにフォーカスし、自分のできることに集中したんです。結果、予選会で最低限必要な結果を出した上で、次の試合でも優勝して目標の大会への切符をつかんだんです。怪我をしたことをチャンスだと捉えられる彼女のメンタルのしなやかさにすごく感動したのを覚えています。


 

 

「きっと大丈夫」そう思って、一歩引いた視点で話を聞く

 

 ―― コーチングセッションでいつも心がけていることはありますか?

 

「大丈夫でしょう」と思っていつも話を聞いています。明確に課題がわかっている場合だけでなく、課題がわからずぼんやりしたところからスタートする場合もありますが、いずれにしても、「仮に失敗したとしても、この人の人生にはプラスになるはずだから何の問題はないだろう、きっとうまくいくだろう」という一歩引いた視点で話を聞いています。そうすると、自然とご本人がこうしたらうまくいくかもしれないというポイントを自分の中で見つけられる気がします。

 

といっても、若い選手や大学生が相手の場合、つい私の教えたがってしまう癖が出てしまうので、気を付けています(笑)。提案を超えた指導をし始めてしまうと相手の納得度合いが良くないので、「言わなければよかった」と後悔することもよくあります(笑)。

できるだけ「きっと大丈夫だろう。今考えたいタイミングなんだな。」と見守るような気持ちで接するようにしています。

 

 ―― よくセッションでなげかける「問い」を教えてください。その理由も教えてください。

 

「本当はどうなりたいですか?」という問いは必ずお聞きします。さらに、「その先はどうなりますか?」と、もう一歩先を描いていただくよう心掛けています。以前、駅伝選手でエースになることを目標にしていた方がいたのですが、話を聴いていくと「いつもゴール近くで応援してくれているおじいちゃんやおばあちゃんに恩返しをしたい」という想いが出てきたんですよね。その後タイムも早くなり目標通り活躍するようになりました。本人から後で聞いたことですが、その想いが出てきたことで、大きく変化したそうです。

 

アスリートは結果が全てですが、その時に叶えたい状況やタイムだけでなく、味わいたいものが出てくると強いと思うんです。ビジネスマンでも同じです。どうなりたいか?と聞くと、成績や数字が出てきますが、それが実現したとき、何をしているのか?誰とどんな話をしているか?誰と喜びたいか?などを話していくと表情が変わります。アスリートよりもイメージするのに時間がかかりますが、慣れていないだけです。慣れると楽しくなってくるようです。

 

 

 

オンラインだからこそ多くの方と出逢えることがコーチから見たme:Riseの魅力

 

 ―― これからやってみたいことはありますか?

 

もっと色んなアスリートのコーチをやりたいですね。プロチームのスタッフとして入り、アスリートのサポートをしたいです。他には、実業団の企業と提携し、アスリートのサポートだけでなく社員の研修までオールマイティーにかかわれたらいいなと思っています

 

私自身もキャリアについて会社員時代に相当悩んできました。その時に話を聞いてくれる人がいたら、どんなに心強かったかと思います。そして、結果的にコーチングと出会い、新しいキャリアに進むことができました。コーチングとの出会いに本当に感謝しています。

コーチである私から見たme:Riseの魅力とは、オンラインだからこそ多くの方と出会えることです。転職するしないに関わらず、多くの方のキャリアに関わることはコーチングへの恩返しになると思っています。またここでのキャリアを積むことが私の未来にとっても必ずプラスになると思っています。

【Profile】

河邊 英里子

SMBC日興証券(株)に18年勤務。営業、債券・投資信託のマーケティング、人材育成を担当。現在はアスリート、経営者の個別コーチングやチームサポート、企業研修を軸に活動。2016年にはメンタルサポートしていた女子体操選手がリオ・オリンピックに出場、48年ぶりの4位に貢献した。目標を明確にし、クライアントが目指す結果までの工程を作るコーチング・研修は言語化力、行動力が上がり、実際に変化が出ると定評がある。

 

(一社)フィールド・フロー認定スポーツメンタルコーチ、チームフロープロコーチ養成スクール認定コーチ、全米NLP協会プラクティショナー