Coach Interview

コーチ紹介インタビュー

人への関心がキャリアの軸に――多様な経験から見えた自分の道

 

 

――これまでのキャリアについて教えてください。

 

小学校6年生から中学2年生まで、親の転勤でシンガポールに住んでいました。その経験があってか、子どもの頃から人への関心がすごく強かったんですよね。そのまま大学では教育心理を専攻しました。

 

大学で学ぶ中でも、人と向き合うことや、人生の岐路に立つ方々を支援すること、人が生きていく上で切り離せない「生きがい」のようなものに関わることに興味があって、自然と人材業界を目指すことになったんです

 

ただ、就職活動は思った通りにはいきませんでした。その結果、1社目は損害保険会社に一般職として入りました。カルチャーも業務内容も自分には合わなくて、ルーティンワークが多く、金融ということで数字を扱う緊張感のある仕事が続く中で、「これは違うな」と感じました。

 

その経験を経て、やはり自分が本当にやりたかった人材業界で働きたいという思いが一層強まり、3年目に転職を決意しました。転職先の会社では17年間勤務し、最初は法人営業としてキャリアをスタートしました。その後はキャリアアドバイザー、教育担当や人事企画というキャリアパスを歩んでいます。

 

人材業界で働く中で感じていたのは、「人には必ず輝ける場所がある」ということです。その信念をもとに、マッチング業務や成長支援に携わることに大きなやりがいを感じていました。

 

 

  

シンガポールで芽生えた「人への関心」の原点

 

―――幼少期のシンガポールでの経験とはどのような経験なのでしょうか?

 

私の「人に関心を持つ」という感覚の原点になったと思っています。日本で暮らしていたときは日本人しか知らなかったのに、突然、多種多様な人種や文化に囲まれることになりました。今でこそ「多様性」という言葉が一般的ですが、当時はもう「ぱっと見から違う」という状況に放り込まれたわけで、そのギャップを体感せざるを得ませんでした。

 

テレビやネットの情報で知っているのとは全く違って、リアルな生活として「多様性」を受け入れる必要がありました。ただ、言語も文化も習慣も違うのに、思いやりを受け取ったときには喜ぶとか、尊重されていないと感じると悲しいなどの感情は同じだったんですよ。こうして違いの中に確かな共通点がある、そんな感覚が芽生えていきました。ちょうど多感な時期だったこともあり、人格形成における環境の影響力を肌で感じたのも大きかったですね。教育や文化が人に与える影響について関心を持ったのは、まさにその経験からだと思います。

 

 

 

――異文化での経験がキャリア選択に影響したのですね

 

そうですね。人への関心をさらに深めたくて、大学では教育心理学を専攻しました。人と向き合うことや、人生の岐路に立つ方々を支援すること、人が生きていく上で切り離せない「生きがい」のようなものに関わることに興味があって、自然と人材業界を目指すことになったんです。ただご縁がなくて、最初は損害保険会社に一般職で入社しました。

 

ただ、損保の仕事は数字を扱うため常に緊張感があり、業務もルーティンワークが中心でした。そのため正直、自分にはあまり合わないと感じていました。

 

さらに、当時の会社では女性だけが「一般職」という枠に押し込まれることが多く、女性の活躍を応援したいという思いから人材業界を志していた自分にとって、その価値観に強い違和感を覚えました。「女性だからという理由で役割が限定されるのはおかしい。もっと活躍できる場があるはずだ」と強く感じ、3年目に本来志望していた人材業界への転職を決意しました。

 

転職後、最初は法人営業からスタートして、その後キャリアアドバイザー、教育担当人事企画を経験しました。やはり人材業界には「人に関心がある人」が多いので、働くこと自体がとても楽しかったですね。

 

社会人にとって、仕事は人生の大半を占めるものであり、その環境をより良いものにするお手伝いができることは大きなやりがいでした。また「男女関係ないフィールドがある」と実感できたのも、この会社に来たからだと思います。

  

 

 

―― 「人には必ず輝ける場所がある」という鶴谷コーチの信念は、どこから来ているのでしょう?

 

母がすごく生き生きしていたことが大きいかもしれないですね。専業主婦が多かった世代の中で私の母は働いていて、子どもの時の私から見ても本当に人生を謳歌しているなと感じました。後から振り返ると、それは結構珍しいことだったんですよね。

 

だから「女性だから専業主婦」という固定観念は持たなかったし、「いろんな選択肢があるんだ」と自然に思えました。でも社会の現実はまだまだそうではなく、そのギャップを解消したいと思っています。

母の姿は、私にとっての一つのロールモデルですね。 

 

 

 

コーチングで見つけた、「転職だけではない、人の可能性全てを引き出す」支援の形


 

――コーチングとの出会いについて教えてください

 

20代後半、キャリアについてもやもやしていた頃に「何か新しい学びを通して自分を打破したい」と思ったんです。そのときに出会ったのがコーチングでした。

 

体験講座を受けて直感的に「あ、これだ!」と思いましたね。私の人生に必要な要素でしたし、人の可能性を引き出すコーチングスキルを身につけられたら、いきいきと働く人を直接的に増やせると感じました。

 

ただ当時は「まだ自分には人生経験が足りない」と感じて、一旦は学びを深めるために人材業界で経験を積む道を選びました。その後、法人営業からキャリアアドバイザーにシフトしたのも、コーチングを学ぶ中で「もっと人の人生に深く入り込んで変容を促す支援をしたい」と思ったからです。 

 

 

 

――そこからプロのコーチとして仕事するようになった経緯を教えてください。

 

結婚や出産も経験し、育児を優先したい時期があり、仕事のやりがいというよりも、いかに両立するのかという方に気持ちが傾いていました。時短勤務で好きな仕事を続けられてはいたけれど、どこか中途半端に感じていたんですよね。「働くママだから仕方ない」と思い込もうとしましたが、もやもやは大きくなる一方でした。

 

そんなとき、コーチになった友人がいたので、「コーチングに興味はあるけれど、仕事も子育てもあってどうしようか」と悩みを打ち明けたことがありました。すると友人から「コーチングをやらないという選択肢はあるの?」と問いかけられたのです。その瞬間に「やらない選択肢はない」とはっきり気づけたことを、今でも鮮明に覚えています。その気づきをきっかけに、自分の人生を生きている母でありたい」という思いが強くなり、先延ばしにするのはやめようと決意して、数年前から本格的に学び始めました。

 

学び始めてからは本当に楽しくて、「心が喜んでいる」と感じる毎日でした。学びを深めれば深めるほど「コーチングを届けたい」という思いが強くなり、同時に自分のキャリアに停滞感を覚えていたこともあって、コーチとしての役割の発揮方法を模索しました。副業としてやる、社内でコーチングを行うなど、選択肢はいくつかありました。

 

しかし、コーチングを受けるなかで本音に気づきやすくなり、それを大事にしない自分に違和感を覚えるようになりました。「本当に自分が生きたい生き方は何だろう」と自問自答を重ねた末、会社員を辞める決断をしていましたね。

プロコーチになりたいという気持ちを、見て見ぬふりをせず選んだ結果だと思います。

 

 

 

――キャリアアドバイザー時代と、コーチングしている今との違いはありますか?

 

 

 人材紹介のキャリアアドバイザーの仕事は、基本的に「転職ありき」で進むことが多いです。求人を紹介して転職してもらうことがゴールになりがちでした。しかし、人生の岐路に立つ方々と向き合うなかで、転職という行動を選ぶこともあれば、もっと複雑に絡み合った人生の悩みがあることに気づきました。価値観や背景が折り重なって「転職したい」という思いにつながっているのだと思いますが、求人紹介だけでは解決できない課題も多く存在します。そうした限界を感じる一方で、「人生全般を扱い、その人全体に焦点を当てられる」コーチングこそが、本当に自分がやりたい支援の形だと強く実感しています。

 

 

 

クライアントとの関わりで見えた「感情に向き合う」ことの重要性

 

 

 

 

――今はどんな方をサポートされているのですか?

 

同世代の30代女性を中心に、

ライフイベントに揺れる方々を支援しています。また、次世代への関わりも大事にしていて、小中学生や大学生に向けたプログラムにも参加しています。授業の一環でコーチが複数人入り、学生の話を真剣に聞くものなのですが、15分ほどでも、自分を受け止めてもらう体験は大きな気づきに繋がると思っています。

 

大学2年生向けのプログラムでは、自己理解を促進する役割をコーチとして担っています。私自身、就活直前に突然「自己分析」と言われても全く分からなかったので、若い世代にそうした機会を届けたいという思いがあります。

 

 

 

――印象に残っているセッションがあれば教えてください

 

ある女性とのセッションがとても印象に残っています。セッションの最中に、悲しさや虚しさといった強い感情が溢れ出していたのですが、勇気を持ってそれにしっかりと向き合ってもらいました。最初はとても辛そうな悲しい表情でしたが、途中から感情が怒りへと変わり、それに伴って表情もどんどん変化していったのです。そして次のセッションでは、まるで別人のように驚くほど晴れやかな表情を見せてくれました。

 

「前回のセッションで、ずっと抱えていた虚しさが、竹を割ったようにパーッと晴れたんです」と語ってくださったとき、感情と向き合うことの力を改めて実感しました。

 

 

 

――セッションで大切にしていることは何ですか?

 

テーマそのものではなく、「その人自身」に焦点を当てることです。話の奥には、本当の願いや希望、可能性が秘められているので、そこをどう照らせるかが私の役割だと思っています。

 

特によく投げかける問いは「それについて今、どんな気持ちですか?」「それについて今、何を感じていますか?」といったものです。

日常の会話ではあまり問われないからこそ、コーチングでこうした質問を受けることで、クライアントさんが自分の抱えている感情にまず気づくことができるのだと思っています。

 

 

 

「数を追うのではなく、一人ひとりの人生をより良くする」ことを追求するme:Riseへ共感

 

 

――me:Riseを選んだ理由を教えてください

 

お話する機会があったme:Riseのコーチが本当に素敵な方で、「その方が参画している組織はどんなところなのだろう」と気になって調べたのがきっかけでした。ホームページを拝見すると、コーチを厳選していることや「量より質にこだわっている」という姿勢が強く伝わってきて、その考え方に深く共感しました。

 

また、人材業界で長く働いたからこそ、「数を追うのではなく、一人ひとりの人生をより良くする」サービスに魅力を感じました。

 

 

――コーチの視点から見たme:Riseの良さを教えていただけますか?

 

社会人は学生のように「インターン」で職場を試すことができないので、転職を決断するのはとても大きな勇気が必要です。その点をカバーすべく、特にme:Riseでは業界経験者へのキャリアヒアリングセッションがあります。

「転職をゴールにしない」というスタンスで、その人に合う選択を本気で一緒に考えてくれるような、人材業界にいた頃に私が感じていた課題をまさに解決してくれるサービスだと思っています。

 

 

 

――これから目指したいこと、実現したい夢などがあれば教えてください。

 

一人ひとりが自分らしく生きることが当たり前になる社会を実現したいと思っています。社会の「正解」や「見えない圧力」に合わせて生きるのではなく、

一人ひとりに多様性が受容されていて、自分を表現できる社会にしたいですね。

そのために、大人世代の支援も次世代への関わりも、両輪で続けていきたいです。

未来に希望を持てることを若い世代に示すのも、コーチというか大人の大事な役割だと思います。私はその架け橋みたいな、ちゃんとガイドできるコーチでありたいです。

 

 



【Profile】

鶴谷 愛子

学生時代から人への好奇心が強く、人がいきいきと働くことを支援したいと思い、転職エージェントの㈱パソナにて約17年間勤務。法人営業・キャリアアドバイザー・研修・人事企画業務に従事。

対人支援としては900名以上の方とキャリア面談を行い、研修担当としては全体のグランドデザイン含め全研修の企画運営を担当。成長支援に携わる喜びは感じつつも、より人の本質的な変容に関わりたいという気持ちが強くなりコーチとして独立。

現在は、一人ひとりが自分の内側の声を聴いて、本当の想いや願いから生きていけるよう「心が喜ぶ生き方を後押しするコーチング」を提供中。

コーチとしての好奇心や直感を大事にしながら、クライアントをエンパワーすることを心がけている。

 

・国家資格キャリアコンサルタント

・CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ (CPCC)